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東京地方裁判所 昭和39年(行ウ)76号 判決

原告 平野善男

被告 法務大臣

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

訴状及び昭和三九年九月二四日付準備書面によれば、原告の請求の趣旨は、「原告が昭和三九年六月一日なした監獄建設規則の閲読願い及び強制端座禁止願いに対し被告がなんらの処分をしないことは違法であることを確認する。」との判決を求めるにあり、その請求原因の要旨は、次のとおりである。

原告は、甲府刑務所に在監中の者であるが、独房の窓に打ち付けてある目隠板の撤去を求めて、監獄法第七条に基づき、昭和三九年三月一日被告に対して「目隠板撤去願い」をしたところ、被告は同年五月一二日右情願を棄却した。原告は、被告の右棄却処分に不服であつたので、これに対し取消訴訟を提起することを前提として、まず甲府刑務所長に対し監獄建設規則の閲読を要請したが拒否されたため、再び監獄法第七条に基づき同年六月一日被告に対し「監獄建設規則閲読願い及び強制端座禁止願い」(以下、本件情願という。)をした。ところが、被告は三か月余を経過しても本件情願に対してなんらの処分をしないので、本訴に至つたものである。

理由

行政事件訴訟法第三条第五項に規定する不作為の違法確認の訴えは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分又は裁決をすべきにかかわらず、これをしない場合に許容されるのであつて、行政庁が申請に対し相当の期間内にこれを認容するか棄却もしくは却下する等なんらかの応答をする義務を有するものでないときは、この申請に対する不作為の違法確認の訴えは許されないものといわなければならない。

原告は、原告が監獄法第七条に基づいてした本件情願に対する被告の不作為の違法確認を求めているが、情願は在監者が監獄の処置に対し自己の希望を申し出て、主務大臣の監獄に対する監督権の職権発動をうながすものであつて、請願の一種と解すべきであるから、主務大臣は、在監者に対する関係で、情願に対してなんらかの応答をなすべき義務を有しているものではない。したがつて本件情願について被告の不作為の違法確認を求める本件訴えは不適法である。しかも、その欠缺を補正することはできないので、本件訴えはこれを却下することとし、訴訟費用については民事訴訟法第八九条、第九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 位野木益雄 高林克巳 石井健吾)

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